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夏子秘話

 投稿者:尾瀬あきら  投稿日:2005年 3月 1日(火)01時25分42秒
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  連載エッセイ 夏子つれづれ
その4 アルプスの少女夏子
昔々の映画で「我が青春に悔いなし」という作品がある。
巨匠 黒澤明監督の初期作品だ。これを観ている人は黒澤ファンか古典映画愛好者ぐらいだろう。堅苦しいこの映画で輝いているシーンは、それまでピアノしか弾いたことのないような細い手で、主人公 原節子が亡くなった旦那さんにかわって田んぼを耕すところだ。
「夏子の酒」で、夏子が田んぼを耕すシーンを描く時に真っ先に思い出したのがこの映画だった。始めは頼りなくよろけながら鍬をふるっていた原さんが、やがてやかんで水をラッパのみするまで逞しくなってゆくそのシーンは、そのまま夏子にさせた(夏子は水筒だが)。小川で泥にまみれた手を洗うと、そこにピアノを弾く手がオーバーラップする。
これもまた頂いた(夏子は原稿を書いている手)。
このように優れた作家は(えへん)、影響をうけたもの、記憶しているものすべてがアイデアの源泉になる。これをかっこよくいうと「インスパイヤー」、悪くいうと「パクリ」という。
私が言うと言い訳がましいが、かの黒澤明監督も「映画を作るっていうのは記憶だね」と、おっしゃっている。スピルバーグも映画を作る前には好きな名作を何本か見るという。
私など、このパクリ・・・いやインスパイヤーの名手といってもよい。
もうひとつ暴露しよう。ラストちかく、夏子は杜氏の造った酒に満足できず、かといってそのことを誰にも言えず、ジレンマに陥って雪の夜、外を徘徊するシーンがある。そこは、テレビアニメの傑作「アルプスの少女ハイジ」から来ている。ハイジもまた、異郷の地で懐かしいアルムの山に帰りたい気持がこじれて夢遊病になってしまうのだ。
このシーンが私はとても好きだ。10時間以上の連続アニメだが、観ることをおすすめする。私は3度は観ている。
上手にパクる・・・いやインスパイヤーすることが出来たときは自慢したいぐらいだ。
今夜もまたアイデアにつまってこのエッセイを書いているが、書き終わったら
また過去の記憶を掘り起こしてなんとかアイデアをでっちあげ・・・いや名シーンをものにしよう。しかしハイジは泣けるなあ。
 

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